欲望の店 「カオスカナル」

 

栗本アキラ 著 

 

 

 

 男でも女でも、老若問わずその望みを叶えてくれる場所があった。

知らず知らず、その扉を開いていく者たち。その欲望のおもむくままに。

しかし、それは悪魔の囁きとも言えたのだった。人の欲望が完全に満たされることなど、ありはしないのだから・・・・。

 


 

第2話   「由香と春美」

 

Vol.3  春美<2> 

 

 

 夜。

春美は部屋のベッドに寝そべりながら、小さな人形を手にとって眺めていた。

「本当にこの人形で・・・・」

見た目は何の変哲もないただの人形・・・・。しかし、これを使って『由香』になれた事が、今一つ半信半疑の春美。あの時の事を思い起こすと、夢か現実かはっきりとは確信が持てずにいたようだった。

しかし悩むことなど何もない。時計の針をちらりと見る春美。

「9時半か・・・・」

───そう。試せばいいのだ。獲物はすぐ『そこ』にいるのだから。

2階の窓から、そっと隣の家を見る。部屋の明かりがカーテンの隙間からもれているのが分かる。由香の部屋だ。

「まだ、起きているのね・・・・」

春美は先ほどからずっと由香が寝つくのを待っていた。相手が眠っていないと、人形の力が使えないからである。

じっと由香の部屋を見つめている春美。と、その時、不意に玄関のベルが鳴り響いた。

「なによっ。こんな時間に・・・・」

春美は階段を降りると、そっと玄関のドアを開けた。無論、チェーンは掛けたままだ。両親は仕事でいつも遅いため、こうした用心には抜かりはなかった。

「あー。○×商会の者なんですが・・・・」

見ると、年老いた男が立っている。どうやらどこぞのセールスマンらしい。

「お嬢ちゃん、お家の人は?」

「いま、誰もいないよ」

そっけなく答える春美。どう見ても品が良いとは言いがたい雰囲気の老人なのだ。これは押し売りに違いないと春美は思った。

「そう・・・・。一人で留守番かい? 偉いねー」

子供扱いされてカチンとくる春美。しかも、ドアの隙間からジロジロとこちらを覗き込む老人の目がいやらしく、無性に気持ちが悪かった。

「じゃあ、また来ますんで・・・・。やれやれ、隣も留守だったし・・・・まいったね」

そう言って立ち去る老人。

ドアを閉め、ほっとする春美だったが、老人の言葉に少し引っかかったのか、パタパタと足早に2階へ駆け上がって行くのだった。

再び、窓から由香の部屋を覗いてみる。確かに電気は付いているが、動きがまったくない。

「もしかして、由香のやつ寝てるんじゃ・・・・」

この時を待ちきれずにいた春美は、思わず人形の首を捻ってしまっていた。

瞬間、目の前が真っ白になる。しかしそれは、あの日入れ替わった時とは明らかに違う別の感覚だった。戸惑う間もなくふっと意識が遠のく春美。

(あ・・・・!?)

一瞬気を失ったのだろうか。閉じた目をなかなか開けることができない。それに妙に身体が温かい感じがする。

「あ・・・・あれ?」

ようやく意識がはっきりしてきた春美があたりを見回すと、白い湯気の立ち込める狭い空間の中にいることを知る。

「・・・・お風呂場?」

そこは、まさしく浴室であった。しかし、自分の家のものではない。

裸で湯につかっている現状はなんとか把握できたが、どうもおかしい。春美は風呂場の鏡を覗き込んだ。すると・・・・。

「由香だ・・・・」

そこには、間違いなく『由香』の姿が映っていた。入れ替えは成功したのだ。どうやら由香は風呂場で眠っていたらしい。しかし────。

「でも、身体が入れ替わるんじゃ・・・・」

春美の疑問も当然である。しかしその時、さっきから片手に何か持っていることに気付く。見るとあの人形であった。

「あ・・・・首が・・・・」

人形の首を見て、春美はあの店の主人の言葉を思い返していた。

(右に捻って肉体を・・・・。くれぐれもお間違いなく・・・・)

右に捻って・・・・たしかにそう言っていた。しかし人形の首は『左』に大きく捻られていたのだ。

しばらく何か考えていた春美だったが、不意に口元に笑みが浮かぶ。

「あはは・・・・。なんだ、そうなんだ・・・・」

右で身体、左で・・・・心。春美は確信した。

うっかり間違えたことで、さらなる力を得てしまった春美。これで人形の使い方を完全に理解できたようだ。鏡に映る裸体を見ながら、笑いが込み上げてくるのを抑えられない春美であった。

風呂場から出ると、春美は濡れた身体をバスタオルで拭きながら廊下に顔を出してみた。家の中は静まり返っている。どうやら由香の両親も留守のようだ。

春美は由香の部屋で何か着る物を探そうと2階へ足を進めたが、ふと立ち止まる。

「ちょっと・・・・スリリングかな」

そして何を思ったのか、バスタオルを床に放り投げると、そのまま玄関の方へと向かって行くのだった。

「夜のお散歩・・・・うふふ」

ドアを開け、月明かりの外へと出て行く春美。無論、その身には何も着けてない、生まれたままの姿なのだ。

湯上りで火照った身体に夜風当たる。

「あー、いい気持ち・・・・」

こんな夜更けに外を出歩く事など、今までの生活では考えられないことだった。ましてや、素っ裸でなど・・・・。

一糸まとわぬ格好で表を歩いている事にドキドキしながらも、例えようのない開放感を味わう春美。大通りから外れている家の前の道は、この時間めったに人は通らない。それがさらに春美の興奮をかき立てていた。

「あ!」

そんな時、春美の目が輝く。向こうから人が歩いてくるのが見えたのだ。

「うぃ〜っと・・・・ヒック・・・・。焼きとりぃが一本・・・・」

千鳥足でよたよた歩いてくるのは、顔を赤くした酔っ払いであった。

「熱燗ん〜が一本・・・・っとぉ。うぃ〜・・・・」

「こんばんわ。おじさん」

「おう、こんばんわ〜。ヒック・・・・」

すれ違い様に挨拶を交わす2人。

「おっぱいぃが、ふぅ〜たつぅ・・・・と。うぃ〜・・・・。ん!? おっぱい?」

何か違和感を覚えた酔っ払いが、今すれ違った少女の方を振り返る。

「ん・・・・? んんんっ!?」

途端に男の目が丸くなる。男を見ながら微笑む少女の裸体を、上から下まで月明かりが照らしてくれていた。

「は・・は・・はだかぁ? な、な、な・・・・」

男は目を疑った。しかし、間違いなくそこには裸の少女が立っていたのだ。背格好の割に良く育っている乳房。色艶のいい乳首の形まで、はっきり見てとれる。

「どうしたの? お・じ・さんっ」

そう言って男の方に向き直ると、左手を腰に、右手を頭の後ろにとポーズを取って見せる少女。可愛い乳房が小さく揺れる。唖然としながら立ち尽くす男。そしてその視線は乳房から下腹部へと移っていく。しかし少女は何も隠そうとはしない。

「うっ・・・・。おっ・・・・おいっ・・・・おまえ・・・・」

男が信じられないといった顔つきで近づいてきた時だ。春美はニコリと笑うと、手に持っていた人形の首を素早く元に戻したのだった。

途端に少女の身体はバランスを失ったように男の前で崩れ落ちた。

「あ!? あぶ・・・・!!」

驚いた男が咄嗟に手を伸ばして少女の身体を受け止める。

「おっとと・・・・。ふぅ・・・・。ふ・・・・!?」

男の目が再び丸くなる。

腕の中で少女は仰向けになって気を失っているのだ。目の前で2つの白い膨らみが呼吸に合わせて揺れているのが分かる。間近に見る少女の裸体。しかもそれを抱きかかえている自分が信じられない男。酔いがまわった? 夢? そんな思いが渦巻く。

夢なら夢でもいい。そう思った男の手が、少女の乳房へと伸びていく。

(むにっ)

柔らかな感触が手のひらに広がる。なんという心地良さだろう。男は夢中になって少女の乳房を揉みまわした。

(もみもみもみ・・・・)

「ん・・・・」

少女が僅かに反応する。

背後から抱きかかえるような体勢に変えると、両手で少女の乳房を鷲づかみにし、その弾力を充分に愉しむ男。手のひらにすっぽり収まる少女の乳房は、実に揉みがいがあった。

「ん・・んん・・・・」

「おっ」

不意に男の手のひらにコリッとした感触が伝わってきた。少女の乳首がしこってきたのだ。気を失いながらも、しっかり感じているようだ。

男は、いやらしく笑うと、固くなりかけた乳首を指先でチョンとつつく。桜色の突起が小刻みに震えるのを愉しそうに眺めながら、男の愛撫は続いていった。

「あ・・う。あ・・あ・・ああん・・・・」

次第にはっきりしてくる少女の反応。

しかし男は止まらない。今度は下腹部の方へゆっくりと手を這わせていく。少女のヘソの当たりを軽く撫でると、男のごつい手は、そのまま一気に股間へと滑り込んでいくのだった。

「んあっ・・・・」

「うほほっ」

男の顔は歓喜に満ちていた。指先に伝わってくる確かな感触。温かで柔らかくしっとりしたもの。これが少女の・・・・。

それを考えると、男の興奮は最高潮へと登りつめていく。

無我夢中になりながら、少女の『その部分』を丹念に丹念に愛撫し続ける男。ほどなく指先に伝わってくる感触に『湿り』が出てきた事がさらに拍車をかけていた。

「へっへっへ・・・・」

「あぅ・・・・あんんっ・・・・んんんっ・・・・。はっ!?」

少女がようやく目を覚ました。

「きゃっ!? なっ・・なに??」

突然、目の前に男のいやらしい顔が飛び込んできたのだ。少女は驚いて男から飛びのいた。突然のことに状況を理解できずにいる少女。無理もない。尻餅をついて呆然と男の方を見上げるだけだった。しかも、なにか身体が妙に熱く感じる。何かたまらない感じがするのだ。そんな自分を男は黙って見つめている。いやらしく歯を見せながら。

「そうだ・・・・わたし、お風呂に・・・・。お風呂・・・・?」

記憶が徐々にはっきりしてくる少女。そして先ほどから下半身が変な感じに痙攣している事に気付いたのと、ぼーっとした目で自分の身体を見下ろしたのは、ほぼ同時だった。

「!!!!!」

この時、少女・・・・もとい由香は、初めて自分が全裸であることを知るのだった。しかも、股を開けて尻餅をついていたので、男に自分のすべてを見せてしまっていた事になる。いやらしく笑っていた男の目には、ヒクヒクと恥ずかしく痙攣させていた自分の秘部が映っていたのだ。

「きゃぁぁぁーーーーっ!!」

少女の悲鳴が響き渡る。これには、さすがにたじろぐ男。その隙に由香は全力で暗闇の中へと駆けて行くのだった。

どこをどう走ったのか分からないが、なんとか自分の家までたどり着く由香。途中、何人かの人に出会ったような気がしたが、記憶の底へと無理やり押し込んだ。もう、何も考えたくなかったのだ。

玄関のドアを閉めると、ようやく一息つく由香。しかし、身体の火照りが止まらない。不思議に思った由香が、そっと股間に指を当てる。

「あぅっ!」

ビクンと身体を震わす由香。アソコがジンジンして熱いのだ。しかも濡れているではないか。もう何が何だかまったく分からないといった感じである。よもや見ず知らずの男に、イかされる寸前まで愛撫されていたとは思いもしなかっただろう。

そしてそんな由香の姿を、隣の家の窓から小気味よさそうに見つめる者がいたことなど、今の由香に気付ける道理もなかった。

「なんなのよっ・・・・もおっ!!」

昨日から変なことばかりである。あまりの事に由香は裸のまま、しばらくその場所を動けなかった。

その日の深夜である。

なかなか寝付けなかった由香が、ようやく深い眠りに落ちていった時のことだ。寝ていたはずの由香が、突然むくりと起き上がったのだ。口元に笑みを浮かべながら・・・・。

そしてベッドから降りた由香は、なぜか体操服に着替えると、そのまま外へと出て行ってしまった。

夜道を歩きながら、由香が小さく呟く。

「ふふ・・・・。由香・・・・もっと楽しませてあげるね・・・・」

春美である。

その暴走は、もはや誰にも止められはしなかった。

そして春美がカオスカナルで手に入れた物・・・・。それは、あの人形だけではなかったのだ。

   

 

 翌日の朝。

由香がゆっくり目を覚ます。

鳥の声が遠くから聞こえる。さわやかな筈の朝に、何か妙に気だるい感じがする由香。

(あ・・・・。え・・・・!?)

咄嗟には理解できなかった。まだ夢の中だとも思った。しかし、そうではない。それは現実だった。

ベッドで眠っているはずの自分が、立ったまま縛られているではないか。しかもどこか分からない屋外にである。

身体中に複雑に絡み合う糸が、周りにある物を巻き込みながら、完全に由香の自由を奪っていた。どんなに力を入れても切れないどころか、無数にある結び目が逆に固く締まっていってしまうのだ。どう考えても普通の糸ではなかった。

それにしても、いったいここは何処なのか。どこかの家の庭のようだが・・・・。

(!!!!)

ハッとなる由香。その風景に見覚えがあったのだ。学校の裏に位置する家・・・・。

それは、あの説教オヤジの家に間違いなかった。

「んんっ・・・・んん!?」

思わず声を上げようとしたが声にならない。見ると猿ぐつわをしている自分に気付く。いったい、何がどうなってしまったのか。昨夜から立て続けの分けのわからない出来事にただ混乱するだけの由香。

そんな由香の耳に、家の雨戸をガタガタさせながら、野太いあの声が響いてきた。

「なんだぁ? 誰ぞおるのか?」

由香は呆然とする。オヤジに見つかるのは、もはや時間の問題だった。

身体を震わせながら、どうすることも出来ないでいる由香。そしてこの時、自分の身体が不自然なまでに熱くなってきている事に、あまりの焦りのため気付けないでいたのだった。

体操服を盛り上げる胸の膨らみの先端。厚い布地の上からでもその形がはっきりと分かるほど小さな突起が目立ってしまっている事にも、紺色のブルマが何かしら汗ばんできている事にも・・・・。

 

 

      <第2話  〜由香と春美〜 Vol.4 由香<2> に続く・・・・>

 

 

 

 

 

 

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《注意》

この物語はすべてフィクションであり、登場する如何なる人物、団体、国家、人種、地名及び地域等、すべてが架空のものです。また、男性にとって有利とも受け取れる女性の心情に関する心理描写、及び身体機能の記述は、すべてが事実と異なる誤ったものです。

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