欲望の店 「カオスカナル」

 

栗本アキラ 著 

 

 

 

 男でも女でも、老若問わずその望みを叶えてくれる場所があった。

知らず知らず、その扉を開いていく者たち。その欲望のおもむくままに。

しかし、それは悪魔の囁きとも言えたのだった。人の欲望が完全に満たされることなど、ありはしないのだから・・・・。

 


 

第2話   「由香と春美」

 

Vol.2  春美<1> 

 

 

 (あなたの成りたいものは何ですか・・・・?)

「う・・・・」

(羨ましいものは何ですか・・・・?)

「な・・・・。あ・・・・」

朝靄の漂う公園の中・・・・。

ポツリと少女が一人立っていた。何かぼんやりとした顔で立ち尽くしている感じだ。

「あ・・・・? あれ・・・・?」

不意に我に返る少女。夢から覚めたかのようにキョロキョロと辺りを見回している。

「わ・・私・・・・いま・・・・?」

ようやく深い霧が晴れてくると、自分が公園の中にいることを知る少女。見ると目の前に見慣れた風景が広がっている。大きな池の前。学校へ行く時いつも通りかかる場所だ。

少女はゆっくりと池の方へ歩いていくと、水面に映る自分の姿をそっと覗き込んでみる。すると・・・・。

「!?」

そこに映った自分の顔を見て思わず息を呑む。驚きのあまり一瞬よろめく少女だったが、すぐにその口元には笑みが浮かび上がってくるのだった。

「あはは・・・・。ゆ、夢じゃなかったんだ・・・・」

少女はすべてを思い出した。水面に映っているのは自分が妬ましく思い続けていた者の姿・・・・。由香と言う名の少女の姿だった。そして、それを見て小気味よさそうに笑っている少女こそ────。

「由香・・・・。私・・・・、由香になってる・・・・」

霧の中に現れた奇妙な店。はじめは夢だった。しかし夢から覚めた後、何かに呼ばれるように、何時の間にか欲望渦巻くあの場所へと誘われて来たのは、春美であった。

カオスカナル─────。

その妖しい空間で、春美は主からいくつかの品を受け取っていた。半ば夢遊病のようにして来ていたので、ほんやりとしか覚えていないが、その一つが今使っている小さな人形だったのだ。

(この人形を媒介に意中の相手と入れ替わります・・・・。ただし、相手が眠っていないと効果は発動しませんので御注意を・・・・)

妖しげな店の主人の言葉が思い出される。この時間、由香はぐっすり熟睡していたはずなので、入れ替えに問題はなかったようだ。おそらく今、由香のベッドには春美の姿をした由香が寝ているのだろう。

(右に捻って肉体を・・・・。くれぐれもお間違いなく・・・・)

再び主人の言葉が頭をよぎった。

相手の場所も衣服もそのままで、純粋に身体のみを入れ替えるらしい。今着ている服は来るときに春美が着てきたものだ。

白いTシャツに水色のスカートをたなびかせながら、楽しげに水面に自分の姿を写す春美。いつもより胸のゆれが余計に伝わってくるのがわかる。やはり由香の方が少しだけ大きいようだ。

「ふん・・・・。そんなに変わらないわよ・・・・。ちょっとだけよ・・・・ね」

しかし不思議である。春美には微かに疑問が残っていた。なぜ由香と変われたのだろう。魔法か何か、そんなことは信じれば済むことだが、春美の疑問はその点ではない。

なぜ、いきなり他の誰でもない由香を選択できたかということだ。

人形には由香を記すものは何もなかったのだ。髪の毛とか名前とか、オカルト本などでよく出てくるアイテムのことだ。

「ふ・・・・。ふふふ・・・・」

しかし、水面に映る由香の顔を見ているうちに、春美にはもうそんな事はどうでもよくなってきていた。今、この力を得た喜びが改めて込み上げてきていたのだ。

自分は今、あの『由香』なのだ。

何をするにも勝てなかった『由香』になっているのだ。

一番目障りな存在・・・・。春美の歪んだ復讐?が動き出していた。

まだ日も昇らない朝の公園を足取り軽く歩いていく『由香』をまとった春美。これから、どうしてやろうか・・・・。春美は頭の中で暗い思いをめぐらせていた。

(ふふ・・・・。コンビニで万引きでもしてやろうかしら・・・・。それとも交番に石でも投げ込んでみるとか・・・・)

物騒なことを考えながら何かわくわくしている様子の春美。どんなに悪いことをしても、それは『由香』の仕業となるのである。そう思うと普段やれないことでも、なんでもできてしまえそうなのだ。

「あれ?」

いろいろと考えているうちに、ふと公園の木の方に目をやると、そこで横になっている男を見つけた。

毛布に包まって木の幹を枕にして寝ているようだ。通学の時もたまに寝ている人を見かけるが、こんな朝からいるのは、かなり変である。

しかし、普段なら無視して通り過ぎる所だが、今の春美に恐いものなどない。かねてより不思議だった『公園で寝ている男』の正体に興味が出てきたのだった。こんな所はまだまだ子供である。

「そーっと。そーっと・・・・」

寝ている男のそばにゆっくりと近寄る春美。見ると、無精髭まみれの中年男が汚い顔でいびきをかいていた。そしてよく見ると髭の一本が長く伸びて春美の目の前で揺れていたのだ。

春美はおもむろにその一本を摘むと、ぐいっと一気に引き抜いてしまった。

「うおぉっ!! ぅいてぇ!!」

飛び起きる男。そして、びっくりした顔で辺りを見回す。

「あははっ」

男が見上げると、そこにはケラケラと笑う少女の姿があった。

「な・・・・なんだぁ!? なにすんだ? おめぇ!!」

いきなり安眠を妨げられた男は、かなり憤慨ぎみのようだ。あたりまえである。

「ねえ。おじさん、なんで公園で寝てるの?」

悪びれた色もなく、ぶしつけな質問をしてくる小娘に、男の怒りも天を突きそうであった。

「う、うるせー!! ガキは知らんでいいんだよっ!!」

「わかった。お母さんに追い出されたんだ」

「うっ!!」

この男の事情はよくは分からないが、かなり痛い所を突かれたらしい。怒りでわなわなと身体を震わせている。そんな男に構わず、春美は傍らに落ちていた雑誌を見つけると拾い上げた。

「あっ! それは、わしの・・!!」

「わー。Hな本だぁ。こんなのは、こうして・・・・」

「な、なにを!!」

男の前で雑誌を2つに破り捨てると、ポイとくずかごに投げ入れたのだ。愕然とする男の前で、春美はそんな自分自身に驚いてもいた。

普段の自分とは明らかに違うのだ。こんなに他人の前でペラペラしゃべった事などなかった。なにか自分ではないような気がしていた。それはそうなのではあるが、身体の違いが性格にまで影響しているのであろうか。なにかとても行動的な今の自分は春美にとっては新鮮な驚きであった。

しかし、喜んでばかりもいられない。春美の前では怒り心頭の男が、ブルブルと震えているのだ。かなりヤバイ所まできているようだった。

「こ、こ、このガキがっ・・・・!!」

男が本気で怒っているのを見て、さすがにちょっと悪い気がしたのか、今度はなだめに入る春美。

「ごめんなさーい。そんなに怒らないでヨ」

「なにをっ!」

「なんなら、私のを見せてあげるからさー」

「なにをっ・・・・!! なに・・・・?」

一瞬きょとんとした顔をする男だったが、すぐにからかわれたと思い、再び怒りをあらわにする。

「こ、このガキ! どこまで人を馬鹿に・・・・」

「だからぁ・・・・。嘘じゃないって・・・・」

そう言って、ずいっと男の前に身体を突き出す春美。ちょうど腰の部分が男の頭のまん前にくるまで近寄ったのだ。

「うお!?」

身体は起こしていても座ったままの男の鼻先で、少女の水色のスカートの裾が揺れていた。そして見上げれば、その裾の奥には白い布地がはっきりと見えているではないか。

「お・・お・・・・」

唖然としたような歓喜の混ざり合った複雑な表情の男。よく見ればかなり可愛い、まさしく美少女が何でまた自分からパンツを見せているのか不思議だったが、少女のさらなる言葉に、疑問に思う隙も奪われてしまう男。

「フフフ・・・・。こんな身体でよければ、全部見せちゃってもいいヨ」

「え!?」

そう言って今度はTシャツを上に捲り上げる春美。

「おおっ!!」

少女の白い乳房が男の目の前にポロリとこぼれ落ちる。春美はブラを付けていなかったので、男にはいきなりの目の保養であった。

「お・・おお・・・・なかなか・・・・いい乳して・・・・ごくっ」

「そう? たいしたことないよ・・・・こんなの」

そう言って自分で胸を持ち上げて見せる春美。柔らかそうな乳房がぷるんと揺れる。

「むほっ・・・・。いやいや、ここなんか特に・・・・」

男が思わず伸ばした指先が、少女の乳房の先端に触れた。

「あっ・・・・」

「ほうれ、いい具合に上を向いて・・・・へ・・へへ」

人差し指で少女の乳首を下からくいっと持ち上げるようにして弄ぶ男。

「ん・・・・。んん・・・・」

「ほれほれ、もう固くなりおった。うへへへ」

男の言うように、自然に上を向いてしまっている乳首。そして今度はそれを指先で摘むと、コリコリと捏ね回す男。

「あ・・・・あんっ・・・・」

自分の身体ではないと分かっていても、乳首に走る例えようのない感触に、さすがに身を引いてしまう春美。

「あん。もう・・・・。Hね、オジサン・・・・ふふ」

「へっへへ・・・・。感じたか? ひっひ・・・・」

男のいやらしく笑う顔を見ながら、由香の身体を弄んでいるという事を改めて実感する春美。そして、男の前に無防備に肌を晒すという、普段ではありえない事に少々興奮気味でもあったのだ。さらにエスカレートしていく少女の歪んだ欲望。

春美は笑いながら、男から少し離れると、おもむろにスカートの中に手を入れた。そして男の見ている前で、ゆっくりと下着を擦り下ろしていくのだった。

「な・・・・!?」

男が驚嘆の面持ちで見守る中、とうとう白い布切れは春美の足をつたって離れてしまうのだった。そして、そのまま再び男の方へと近寄ってくる春美。ゆらゆらと短いスカートを揺らせながら。

「な・・な・・ななっ・・・・」

もはや男はどこもかしこも硬直しまくっていた。そしてそんな血走った男の目の前に、ほどなく少女のスカートの中身が惜し気もなく晒されたのだ。なにも覆い隠す物のない、露になった少女の股間が・・・・。

「おおっ!!」

「ふふ・・・・。ど、どう? これでいいかな?」

由香の身体といえ、さすがに恥ずかしさはあるようだ。顔も少し紅潮している。無意識にその両足もぴったり閉じていた。

ごくりと喉を鳴らす男。まさか本当にパンツを脱いで見せるなんて思っても見なかったので少々気が動転しているようだ。しかし、目線はしっかりと固定されていた。

「ちょ・・・・ちょっと、片足ぃ・・上げてくれんか?」

「え? うん・・・・」

目の前の現実にようやく思考が追いついてきた男から出た要望に、躊躇なく答えてしまう春美。そっと片膝を上げる。そして男は、上げかけた少女の膝を掴むと、ぐいっと大きく上に持ち上げてしまうのだった。

「きゃ!?」

「うほぉぉぉ!!」

男の歓喜の雄たけびが上がる。

目の前にパックリ開いた美少女の秘部が露になっているのだ。それを下から食い入るように覗き込む男。こんな物めったに拝めるものではない。男は網膜に焼き付けるぞとばかり両目を見開いていた。

「ほ・・・・。おほっ・・・・。こんな所にホクロがあるわい・・・・ひっひ」

とうとう見ず知らずのオジサンに、大事なトコロを全部見られてしまった。しかし、今の春美にとっては、逆にわずかな快感すら覚えていたのだ。それもそのはずである。見られているのは『由香』なのだから。

(あは・・・・。由香のが・・・・オジサンに全部見られてる・・・・)

アソコに男の鼻息が当たっているのが分かる。それほど近くでじっくりと見られているのだ。男の息もどんどん荒くなってきていた。

「な・・なあ・・・・嬢ちゃん。こ、ここ・・・・さわってもいいか・・・・?」

このまま男の好きにさせてもいいかと思った春美だったが、そのとき遠くのほうに人影が目に入った。とたんにさっと男から身を引く春美。ほとんど反射的な行動だった。

「えへへ・・・・。また今度ね」

「そ、そんな・・・・」

少々気のそがれた春美は、やはりジワジワと由香をおとしめてやろうと思い直したようだった。

「今度は、何をしてもいいからさ。オジサンの好きにさせて、あげる」

「へ? そ、そうかい・・・・?」

にやけ顔の男。実は春美もHの意味をよくは分かっていなかったのだが、今の彼女には例えどんな事であっても問題ではないのは言うまでもない。何をされるのか逆に興味をそそるくらいであった。

男に手を振りながら、公園の外へと走っていく春美。

このとき、由香への復讐法は決まったようだった。自分の『興味』も満たす一石二鳥の方法を・・・・。

(ふふふ・・・・由香・・・・。楽しくなりそうね・・・・)

心底楽しげな笑みを見せる春美。そしてこの翌日から、羞恥と恥辱に満ちた仕打ちが待ち受けていようとは、当の由香は知る由もなかったのである。

 

 

      <第2話  〜由香と春美〜 Vol.3 春美<2> に続く・・・・>

 

 

 

 

 

 

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《注意》

この物語はすべてフィクションであり、登場する如何なる人物、団体、国家、人種、地名及び地域等、すべてが架空のものです。また、男性にとって有利とも受け取れる女性の心情に関する心理描写、及び身体機能の記述は、すべてが事実と異なる誤ったものです。

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